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なにかあり/とくになし

仙台か

ぶわっと降ったり
ぐずついたり。


そんな天気のおかげで
高校野球の栃木県大会決勝が連日順延になっているそうで
士気高まるナインや関係者にはいい迷惑だが、
原稿にへばりつく身には
ちょっといいこともある。


金曜日の話。


本来なら
勝戦の中継でつぶれていたはずの時間帯(午前10時)に
NHKで先週放映の「日曜美術館」の再放送。


尊敬している作家のひとりで
現在は仙台在住である佐伯一麦さんが、
これまたぼくの愛する画家である
松本竣介の「白い建物」や「郊外」について
震災をめぐる心象をバックグラウンドにして語るというものだった。


なかでも
1937年に描かれた「郊外」を
津波で流されてしまった家や学校が
時が止まったまま
海の底にしずかに沈んでいるようにも見えるというような意味をともなう
佐伯さんの見立てには
息が止まるかと思うくらい
感じ入ってしまった。


若くして聴覚を失った松本竣介
しずかな画風と色調に
ざわめくものをどうしても埋め込んでしまう画家だった。


淡々としていながら
心をとても揺さぶられる番組を見ているうちに
たいせつなことを思い出した。


佐伯一麦松本竣介、仙台……。
ああ、そうか。


番組のなかで
佐伯さんが美術館を歩くシーンがあり、
見覚えのある猫の絵が
チラと映ったときに
そのことに気がついた。


長谷川りん(サンズイに「隣」の右側)次郎の「猫」。
名著「洲之内徹が盗んででも自分のものにしたかった絵」(求龍堂)の
表紙で堂々と寝息をかいている、あの猫だ。


どうしてもっと早くに気づかなかったのか。
仙台市青葉区にある宮城県美術館と言えば
洲之内徹コレクション。


洲之内さんが手元に残していた
どうしても手放したくなかった絵画や美術品を
一手に引き受けたのが、あの美術館だった。


洲之内ファンには周知のことだが
氏が生前にもっとも愛した画家のひとりが
松本竣介なのだ。


生きていれば今年98歳になるはずの洲之内さんは
1987年10月28日
ぼくの19歳の誕生日に亡くなっている。


氏の代わりに
その愛した絵が
震災と人間を見つめているのだなと思うと
仙台に行かなくちゃならない気がしてきた。


10月末からは
日本初公開のフェルメール手紙を読む青衣の女」が
来るらしい。


行くならそのころかなと思ってます。