男子、異国で昏倒
ちょっとした昼寝から目が覚めたとき
異変に気がついた。
脇腹が痛い。
変な姿勢で寝そべっていたから
寝違えた?
不穏に感じつつ
脇腹をもんでみる。
ツーンと刺すような痛みが
徐々に増していくのがわかる。
これはたぶんあれだな……。
お恥ずかしい話だが、
何年か前の深夜に
おなじような痛みを感じて
「盲腸だ!」と騒いで
救急病院に駆け込んだときのことを思い出していた。
今でも顔が真っ赤になる。
「盲腸だと思うんです」とお腹の痛むところを指差したら、
看護士さんに
「盲腸はその反対側です」と言われたのだ。
結局の診断は
強度かつ急な便秘からくる激痛、
つまり「フンヅマリ」だったのだ。
おおきなカンチョウを注入して
トイレに駆け込み、
整腸剤をもらって帰宅した。
帰りのタクシーのなかで
ツマと空気が抜けたように
プハハ、ヌハハと笑いあった。
まあ、そのときは笑い話で済んだのだ。
で
今回は
旅先の宿。
しかも異国。
あと数時間で今日の目的地に出かけることになっている。
そんな微妙な午前中。
時間が経過するにつれて
痛みはさらに増大していった。
からだを折っても曲げても痛いし苦しい。
たまりかねて
同行のOさんに
「たぶん、ベンピだと思うんです」と窮状を訴えると
「うちの子どもたちも小さいころによくそうなってたから
背中から押してあげるよ」と
急遽マッサージを受けることに。
患部を揉んでもらっているうちに
いくらか痛みがやわらいできた気もするのだが
すぐに激痛はぶりかえす。
トイレと何度も往復を繰り返すうちに
全身が熱くなってきて、
いつの間にかシャツもジーンズも靴下も脱ぎ捨てて
ほぼパンツいっちょうになってしまった。
やがて
意識が混沌としてきて
しばらく昏倒。
そこから先は数時間記憶がおぼろげにしかない。