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なにかあり/とくになし

男子、異国で昏倒 その4

話はカンチョウに戻る。


意識が混乱していたなか
最初の一本を試すとき
あまりの苦痛ぶりを見かねたOさんに
「手伝おうか?」と言われ
最初に
「はあ、お願いします」と返事したものの、
いやちょっと待てよと我に返り
「自分でやります!」と返事した。


だって、おとこのこだもん!


しかし
空意地を張っていても痛みは去らない。
いよいよ3本目の投入を
松永良平作戦本部は決断しました!


投入!


うーん。
今までにまして異物(水)感。
それでも変化の気配はない。
わが命運も、ここまで……か。


そのころ
Oさんのヘルプをしてくれた件のマネージャーさんは
「3本もカンチョウしてダメだったら
 おれの知ってる医者を手配してやるから」
と言ってくれていたらしい。


虫の息のぼくに
Oさんが「医者呼ぶか?」と訊いたとき、
蚊の鳴くような声で
「うん」と
ぼくはうなずいたそうだ。


この時間の意識は
ほとんどない。


次に気がついたときは
ドアが空いて
異国の医者がカバンを手に入ってくるところだった。


一時間くらい気絶していたのかと思っていたが
あとで聞くと
3時間ほどはうなされていたそうだ。


「これで助かる」という希望の光を
なんとなく見出したからか
このあとのやりとりはよく覚えている。


「症状は?」
「痛い」
「ベンピと聞いたが?」
「そう思う」
「どれくらい出てない?」
「2日くらいかな」
「2日? 飛行機のなかで水は飲んだか?」
「あんまり」
「でも2日でベンピにはならないぞ」


そう言って
医者はぼくの熱と脈拍を計り
お腹を何ヶ所か押さえた。


そして
しばらく考えたのちに
ひとこと。


「I don't know」


え?
思わず飛び起きそうになった。


「とりあえずベンピじゃない。
 たぶん、ウィルスがお腹に入ったんだ。食べ物かなにかのせいで。
 解熱剤をあげるから、これを一日最高4回まで飲めばいい。
 それで2日もすれば治るよ」


テキパキと
あまりにテキパキと診断をくだし
診断書と領収書を書いて医者は去って行った。


あとに残されたOさんとぼく。


「ベンピじゃないってさ……」


ぼくも力なく答えた。


「カンチョウ、3本も打っちゃいました。
 こんなに打ったの生まれてはじめてですよ」


そのときすこし笑えた気がした。
Oさんには
とてもそうは見えなかったらしいけど。


一晩寝て
なんとか復活したぼくたちは
翌日無事にインタビューを敢行した。


Oさん、
ミュージシャンのAさん、
彼女のマネージャーのGさん、
薬局の店員さん、
お医者さん、
みなさま本当にご心配とご迷惑をおかけしました。
なんとお礼を言っても言い足りませんが
ありがとうございました。


いまだに
何を食べて食あたりしたのかは不明ですが、
この旅先の流行病であったという話も聞きました。


とにかく
今は元気になりました!
生きててよかった!


つくづく
調子のいいやつ!(身も心も!)