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なにかあり/とくになし

刺青の男

カンチョウ話を書いているうちに
2011年の10月になってしまった。


ずいぶん前の話だが
大学時代に友人からもらった誕生日のプレゼントは
レイ・ブラッドベリの「10月はたそがれの国」だった。


“たそがれ”かよ、と思いながら
ありがたく頂戴した。


ブラッドベリなら
 本当は「刺青の男」が最高なんだけど」とも
彼は言っていた。


一応「10月」にかこつけて選書してくれたのだが
本当のオススメはそっちなのだというわけだ。


「刺青の男」と言えば
ローリング・ストーンズのアルバムで
ぼくがはじめてまともに聴いた一枚でもある。


リアルタイムで
貸しレコード屋で。


ヒットしていた「スタート・ミー・アップ」の
しゃきっとした“だらだら感”や
大好きなジョン・ベルーシの遺作映画と同じタイトルの
シンプルなロックンロール「ネイバーズ」で終わるA面を
最初のうちはよろこんで聴いていたが
そのうち
スローな曲の多いB面を繰り返し
聴くようになっていた気がする。


すこし前に
DJをしていたときに
若い友人がそのB面から
「ヘヴン」という曲をかけて
記憶の凹みを急にほじくられたような
ショックを受けた。


ミック・ジャガー
全篇ファルセットで通す
ふわふわとして不安気なうつくしさのある曲。


すこしピッチを上げていたかもしれないけど
そのセンス
わるくないと思った。


「刺青の男」は
日本でつけられた邦題に過ぎないが
ブラッドベリの「刺青の男」に
アルバムのなかで
いや
ストーンズの全曲のなかでも
一番近い雰囲気を持った曲だった。


ほとんど忘れていたくせに
「やられた!」と
思ったんだ、あのとき。