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なにかあり/とくになし

みかんです

仕事机の上に
いつもみかんが乗っている。


なにげなく乗っているので
ついつい存在すら忘れてしまうが
もう十何年も乗っている。


くさったり
ひからびたりしないのは
それが陶器で出来ているから。


今をさかのぼること十数年前、
新婚旅行で訪れた
愛媛県の松山で買ったのだ。


結婚前は
新婚旅行はイタリアで〜なんて
寝ぼけたことをぬかしておきながら、
結局
式を挙げた熊本から電車で別府に向かい
別府からフェリーで松山に。
そのまま道後温泉で2泊した。


タクシーを借り切って市内観光したり、
温泉浸かったり、
レコード屋行ったり、
それなりに楽しく過ごした覚えがある。


今でも赤面するほどはっきり覚えているのは
気前良く金を使っているうちに
手持ちがなくなってしまい、
なんと新婚のツマに打ち明けて
帰りの電車賃(松山〜東京)をふたり分出してもらったこと。


この話、
前にも書いたことありますが……。


当時はまだ
クレジットカードで切符を買える駅が
限られていたから、だったかな?


まあ
財布も人格も
肝心なところで
底が抜けているということです。


そんな
ほとんど小銭しか財布にない状況だったにもかかわらず
おみやげ物屋さんで
この陶器のみかんを見つけて買い求めた。


「何に使うの?」とツマに訊かれて
「文鎮……とか?」と答えた。


今に至るまで
これを文鎮にして何か書いた記憶ナシ。


ただ
軽い気持ちで手に取ると
意外とズシッと目方があって、
その重たさが苦痛なほどではないが
なんだか不思議な実感が残る。


そんでもって、美味い!


そういう文章がいつか書けたらいいなあと思って
ときどき手に持ったりする。


もうすぐ
今年もみかんの旬が来る。


二階堂和美の歌う
大竹しのぶのカヴァー「みかん」でも聴こう。