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なにかあり/とくになし

ペンコ、テレビを見る

猫のペンコが
テレビを見るようになった。


きっかけは
深夜にテレビをザッピングしていたときのこと。


TOKYO MX
番組放映のない時間帯に
風景映像+文字ニュース+BGMという
いわゆる“フィラー”を流していた。


その映像が
東京の街に生息する猫たちの足取りを
カメラで丹念に追ったものだったのだ。


猫目線による「東京ふれあい街歩き」みたいな。


「ヒーリングタイム&ヘッドラインニュース」という番組名が一応あり、
そのときどきで流れる映像のタイプは違うようだが
気をつけて見ていると
深夜枠に猫映像が流れることは結構すくなくない。


猫の鳴き声がするわけでもないし
最初のうちは
べつだん気にする素振りもなかったのだが、
ある場面で
カメラ目線になった猫と
偶然目が合ってしまった。


そしたらもう大変。


テレビの前に駆け上がって
ペタペタと猫パンチ。


画面のなかで
猫はおおきくなったり
ちいさくなったりを繰り返すのだが
それは別に気にならないらしい。


友だちだという意識もなさそうだが
敵意というほど殺気だってはいない。


たぶん
ガラス一枚で
向こうと隔てられているような印象を
猫なりに「おかしいな」と感じて
ぺたぺたと世界を前足で確認しようとしているのだろう。


以来
テレビが点いていると
ものめずらしそうに眺めていることが多くなった。


こないだのあいつ
また出てこないかな。


それは
恋のようなものなのか。