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なにかあり/とくになし

1964年のあいつ

ゲホゲホ言いながら
日本に帰る飛行機に乗り込んで、
今は海の上。


さっきまで原稿の仕事をしていたが
どうにも能率があがらないので、
行きの機内でも見た
ハングオーバー2」を音を消して反芻したり。


ポール・ジアマッティって
アメリカン・スプレンダー」や
サイドウェイズ」のころは
相当好きな役者だったのになあと残念に思ったり。


そうだと思い出して
カバンからDVDを取り出した。


6・エド・サリヴァン・ショーズ・スターリング・ザ・ローリング・ストーンズ


タイトル通り
1964年から69年まで
ローリング・ストーンズ
エドサリヴァン・ショー」に出演した全6回の番組を
他の出演者やCMまで含めて
完全収録したもの。


過去にも
ビートルズ
プレスリー
同じ形式のものが出ている。


そのストーンズ版は
以前から待望されていたものだった。


そうだそうだこれがあったと
ディスク1をセット。
64年10月25日放映の
ストーンズ、全米のお茶の間に初登場の巻を見る。
画面は白黒。


なにがすごいって
そのときの共演の顔ぶれだ。


コメディアンのロンドン・リー、
クラシック・ヴァイオリンのイツァーク・パールマン
おしどり男女コントのスティラー&ミーラ、
片足が義足のタップダンサー、ペグ・レッグ・ベイツ、
美男俳優ローレンス・ハーヴェイの朗読、
そしてローリング・ストーンズの「アラウンド・アンド・アラウンド」、
続いて
韓国三姉妹キム・シスターズの歌う「ジェリコの戦い」、
ヨーロッパからやってきた超絶ジャンプ曲芸四人組のベロシーニズ、
人気女性コメディアン、フィリス・ディラー、
最後に
ローリング・ストーンズ「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」。


いやー
相変わらず振れ幅半端ナイ。


その後も
65年5月、66年2月と9月、67年1月、69年11月が収録されているが、
登場した瞬間のインパクトといい、
演奏と立ち振る舞いの飾り気のない若々しさといい、
64年の初登場回が断トツで印象に残った。


とりわけミック・ジャガー、21歳!


何もしてないのに
ただその若さに
不敵なまなざしに
なにげないステップに
電気がはしる。


服なんて
そこらで売ってるトレーナーみたいな
無地の長袖シャツしか着てないのに!


65年以降のミックには
明らかに自分の人気を意識した
うっとり具合が振り付けにも衣装にも見え始めてるんだけど、
64年は
ほとんど“何もしてない”ミックのままで
場を支配していくのだ。


これぞ
目覚める直前の魔物・感。


前後の出演者とのギャップもあいまって
すごいものを見たというショックが残る。


このショック感覚は
ビートルズプレスリーの場合でも同様で、
番組の構成も手掛ける司会者エドサリヴァン
ポップ・カルチャーの変化に立ち合い、
本心ではそれをなかば拒否しながらも
結局一番劇的な演出をほどこしてしまう。


わかったふりしたティーン番組とはひと味違う
世代の断絶を襲うショックを
実はこのひとが一番
おもしろがっていたのかな。


ところで
このストーンズのDVDだが、
ちょっと販売のやりかたに難がある。


4・エド・サリヴァン・ショーズ・スターリング・ザ・ローリング・ストーンズ
という“不完全版”がひと月先駆けてリリースされているのだが、
どういうわけか
そこにはこの64年の分(と69年)は収録されていない。


最初と最後を割愛することで
確かに全体としてのまとまりはいいんだろうけど、
買う側にしてみれば二度手間もいいところで
作品としても商戦としても
頭のわるいパッケージと言うしかない。


まさか
そういうヘマ含みも
ストーンズの歴史だなんて
言うつもりじゃないよねえ。