mrbq

なにかあり/とくになし

Have You Never Been Mellow

ソウルやシンガー・ソングライターのレコードを説明するときに
「メロウ」という言葉がよく使われる。


どういう意味で使ってるのかと訊ねると
「気だるい……ですかね」的な
結構あやふやな答えになることが多い。


実際
ぼくが使うときも
そう。


ミッドテンポで
夕暮れ風味な
特別に強い愛憎の感情ではなく
あいまいな心地よさや
今すぐ解決しないやりきれなさを
自分でも持て余しつつ受け入れる
説明しがたい快感と言いましょうか。


そういうものを
メロウのひとことに押し付けているなと
自分でも言葉に対してすまないなと思うことがある。


英語の「mellow」それ自体は
「やわらかい」とか「甘い」とかで
切ない系の成分はあんまり含まれていない。


でも
言葉とは
杓子定規に規定されるのではなく
誤用を含む解釈を繰り返して変化してきたものだというようなことを
国営放送で“ことばおじさん”も言ってたし。


いつだったか
“雰囲気”という言葉が
若者たちのあいだで
ふいんき”と発音されることがあるが
言葉の歴史としてはそれもアリなのだと発言していて
真夜中にうならされた(再放送だったので)。


もうひとつ
ことばおじさんが言いたかったのは
新しい世代が新しい感覚で使うものに関しては
それなりの意味と必然があるのだということではないかと思うのだ。


だから
日本の「メロウ」は
英語の「mellow」と
ちょっとぐらい違ってたっていい。


話がずれた。


ぼくがなにが言いたいのかというと
話は14日の新宿LOFT「シティナイツ」に戻る。


初ソロ「幻とのつきあい方」リリース直前の坂本慎太郎を含め、
いろんな意味で超豪華と言っていいメンバーが
大橋裕之のために集った大喜利を見ているときの
ぼくの印象が
まさに日本的な意味での
「メロウ」だったのです。


意味ナシオチナシなものから
原発や下ネタまで含めて
大橋さんへの
さまざまにメロウな愛があったなと。


腕を組んで神妙に見ているお客さんも
柱の影に座って「今の答えってさあ」とだべっている男の子たちも
あいさつに忙しいどこかの業界のひとたちも
それぞれの態度で
逃げずにこの大喜利という名の
あいまいに心地よく
やりきれなく割り切れない空間を
ひとまず共有しあっていて。


その大喜利の一部始終は
まとめTogetterが出来ていたので(磯部涼さんのツイートより)
そちらをご参照ください。


同行者の都合もあり
大喜利が終わったところで
ぼくは退場した。


聞くところでは
すべての出し物が終わったあとに
抽選で大橋さんが当選者の似顔絵を描くというプレゼントがあったという。


でも「アッパくん」のサインももらえたし
坂本慎太郎の責任感のある態度での大喜利回答も楽しめたし
ドリンクを買ったら
2枚の似顔絵ステッカーももらえた。


ジンジャーエールで大橋さんの描く坂本さんを。
カクテル「シティライツ」で坂本さんの描く大橋さんを。


うすっぺらな紙で
手切り感濃厚なステッカー。
ぼくはこのメロウも
大いに満足した。