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なにかあり/とくになし

タンバダニザカ

月曜日の夜、
すなわち昨晩、
六本木で道に迷ってしまった。


もらった地図を
チラ見しただけで出発し、
うろ覚えのまま右往左往。


今夜の場合、
ヒルズとミッドタウンを
完全に勘違いして地図を解釈してしまったのが運の尽きだったようだ。


お店での待ち合わせの時間に
そろそろ間に合わなくなりそうなので
もらっていた電話番号をコールして
行先の手がかりを訊いた。


「タンバダニザカの入口からすぐのところです」


タンバダニザカ。


アフリカの地名のようなその響きに
一瞬それがこの街にある坂のことなのだとは
思い当たらなかった。


丹波谷坂とは
六本木に無数に存在する
大小の坂のひとつ、らしい。


かつて
タモリのTOKYO坂道美学入門」という
気持ちのいい写真紀行本を出版したタモリさんなら
「ああ、丹波谷坂ね」と教えてくれるかもしれない(面識はないですが)。


そう言えば
あの本、
最近、新訂版になったのだ。


7年前に初版が出たときに
もっとも感心したのは
坂道に対する博学偏愛はもとより、
写真にそえられた文章の品の良さだった。


もっと言うと
この本の「まえがき」ほど
すぐれたエッセイは
今でもそう簡単には見つからない。


新訂版を見たとき
あの素晴らしい「まえがき」は
残されているだろうかと本を開くまでちょっとドキドキしたが、
「新訂版に寄せて」という短い一文をふりだしに置いて、
「初版まえがき」としてちゃんと載っていた。


いや
本当に
この文章は
多くのひとに読んでほしい。


坂道だけに
斜め読み、なんて言わずにね。


それにしても
丹波谷坂は
六本木の坂のなかでもマイナーな部類のようで、
タクシーの運転手さんもカーナビ相手に四苦八苦。


結局
ぼくは15分ほど遅れて
待ち合わせ場所に到着し
非礼を詫びる羽目になった。


もとはと言えば
ぼくの早合点がすべての原因で
タクシーのせいでも
丹波谷坂のせいでもないんだけど。


家に帰って
「TOKYO坂道美学入門」を開くと
丹波谷坂は
本氷川坂の周辺扱いではあったが
ちゃんと紹介されていた。


うなるしかない。