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なにかあり/とくになし

サケロックという変な集団 その1

12月17日、
新幹線に乗ってしまった。


出来心というわけではなく
前からそれは決めていたこと。


12月に名古屋・大阪・東京で行われる
サケロックの3回のライヴが
単に2011年の締めくくりという以上の意味を持つとは
最初にスケジュールを見たときは思っていなかった。


ぼくが
2003年にサケロックを見始めたとき
サックスやフルートが参加した数回のライヴを除けば、
彼らは4人でサケロックをやっていた。


正確に言えばその時期は
キーボードの野村卓史くんの脱退直後で、
残ったこの4人でやっていくしかないし
やるために知恵をしぼってみようという決意で
彼らがサケロックをリスタートしはじめたころでもあったのだ。


いいときにいい場所に居合わせたという言葉が
当てはまるのかはわからないけれど、
ぼくはちょうど4人のサケロックの始まりに立ち会い、
指折り数えてまる9年、
うまくいってる時期も
苦しんでる時期も
4人でまかなうサケロックを見てきたことになる。


ベースの馨くんが
サケロックをやめるのだと聞いたとき
瞬間的に脳裏をかけめぐったのは
ひとり欠けることが残念だという感傷よりも
超ハイスピードでめくられた9年分の記憶だった。


「やめるなよ」なんていう権利は
だれにもない。
やめるのも
つづけるのも
4人が考え抜いた末の結論だ。


のぞみはあきれるほど速く
旅先まで持ってきた原稿の資料もほとんど読み進まないうちに
名古屋に着いた。


あてずっぽうで宿をとり
その時点で「今日は6時開演ですよ」というメールを確認し、
あわてて街へ出た。


今池のBOTTOM LINEに行く前に
寄りたいところがあるのだ。


栄駅で降りて
名古屋の大きなテレビ塔のふもとを通って
ちょっと歩いたところに
目当てのお店はあった。


美容室の2階で営業している
中古レコード・ショップ「Music First」。


この店を経営しているのは
かつてぼくとツマが働いていた
高田馬場レコード店の同僚だったHくん。


正確に言うと
ぼくは一緒に働いた経験がなくて
ぼくより一年長く勤めていたツマとのつながりなのだが、
彼が東京にいたころは
ハイファイに来てくれたりもした。


その彼が
地元の名古屋で自分の店をはじめたことは知っていて
一度行ってみたいとずっと思っていたのだ。


ちなみに
彼と働いている同僚のAくんも
かつてハイファイのお客さんだった。


それまでの仕事をやめて
思い切って名古屋でのレコード屋勤めに
転職したという話は伝え聞いていた。


予告なしで
ドアを開けると
彼はすこし驚いた顔をした。


決して大きなお店ではないけれど
隅々まで愛情のある品揃えになっていることは
すぐにわかった。


過剰に自分の愛情だけを前面にディスプレイするのではなく
お客さんそれぞれの好きな気持ちで
自由に買物をしてくださいというレイアウトが
ここちよい。


「ここを「●●●●」みたいな店にしたかったんですよ」と
ぼくたちが以前働いていた店の名前を彼は出した。


確かに
あの店でぼくたちが体験した
混乱と喧噪とめちゃくちゃな七転八倒の奥底には
お店が偉そうに何かを啓蒙するようなやり方とは違う
素直な愛情の持ち方があったのだ。


ぼくがあの店をやめて
もう13年が経っていた。


おっと
この旅では
センチメンタルな気分にはならないぞと
決めてきたんだから。


外もかなり暗くなってきたので
シングル盤3枚を買って
店を辞した。


この話、またちょっと長くなりそうな気がしてきた。(つづく)