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なにかあり/とくになし

サケロックという変な集団 その2

ひきつづき
12月17日の名古屋にて。


今池のBOTTOM LINEには
はじめて来た。


1Fがエントランスで
2Fがライヴフロア
3Fがバルコニー的なテーブル席という構造。


もちろんフロアは
満員のお客さんで埋まっている。
もっとフクザツな感情みたいなものが
客席から湧き立つものかとも思っていたけど
それは取り越し苦労というものか。


ぼくなんかより
よっぽど平常心で
いつものようにサケロックを楽しもうという気配が
たのもしい。


そりゃあそうだよ。
ステージ上の一挙一動はおろか、
絹ずれの音すら聞き逃さないぞみたいな態度で見つめられたって
サケロックの4人も困るってもんだろう。


まあ
それは
ついつい舞台を凝視してしまいそうになる
ぼく自身に向けての警句でもあるんだけど。


それにしても
この4人が磨いてきたグルーヴというのは
実に得難いものだった。


昔話だが
源くんが
「演奏が下手だからジャム・バンドにはならないんです」
と言っていたことを未だに思い出す。


下手ではないし
むしろ達者な連中が揃っているはずなんだけど
平気でミスもするし、
上達に酔って技能を競うような
あるいは
音楽を見下してもてあそぶようなところがない。


たとえば
ルールを知らずに野球を始めて
「うーん、これどうしたら野球になるのかな」と言いながら
野球ではない野球みたいなものを
ごっこ”や“遊び”ではなくて
真剣に4人で悩んで苦しんで楽しんでやっているのを
はたから見たひとたちが
「野球みたいだけど野球じゃない。ありゃ何だ」と
おもしろがったとでもいうような。


そうか
もしかしてそれは
「野球」を「バンド」に置き換えてみてもいいし、
生きていくいろいろのことに当てはまったりもするだろうな。


そして
サケロックの演奏がうまくいったと思える瞬間には
いつもそんな奇妙なしあわせが漂って、
すなわち
「ぐうぜんのきろく」になっているんだよな。


そんなことを考えながら見ていたら
源くんが
こんなMCをした。


「これからもサケロックという変な集団をよろしくお願いします」


そのひとことが
ポーンと心の壁にバウンドした。


バンドのようでバンドでないというぼくの思いと、
サケロックという変な集団」というフレーズが
からまりあってぐるぐるまわった。


何となく
それはその場の思いつきで出た言葉ではなく
彼がこれからのサケロックを考えて
あえて口にした言葉だと思えた。


直感的かもしれないが
すべてを言い当てているし、
これまでの自分たちと
これからの自分たちを
つなぐ言葉であったりもする。


その言葉を聞いた瞬間、
ぼくは翌日の東京での約束をすっぽかして
大阪まで着いて行って
このサケロックという変な集団が
2011年の最後に迎えるひとつの節目の
途中経過も行先も
とことんまで追いかけてみようと決めたのだ。(つづく)