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なにかあり/とくになし

三匹の猫と一匹のドラマー その7

わたしはこの家で王様ぶって暮らしているけど
ドラマーはすこしだけわたしに不満があるらしい。
それはわたしがあんまり「にゃあ」と鳴かないってことだった。
わたしは無口な王様なのだ。
しかも
ただでさえ無口なうえに
わたしの声はとてもちいさくてかすれてる。
こんなにおおきなナリをしてるのに
泣き声はか細い。
サカリのついた外猫みたいに
一晩中ぎゃあぎゃあ鳴いてるよりもよっぽどマシだと思うけどね。
ところが
この家にちょくちょく泊まりに来るようになった日本人も
猫を一匹飼ってることがわかって
そこからドラマーのちょっとした嫉妬がはじまった。
その日本人は家で留守番しているツマにときどき電話をかけるんだけど
その電話口で
これまた日本の猫(黒猫らしい)が
にゃあにゃあにゃあにゃあ
よく鳴きやがるのだ。
よくもまあ
あんなに言いたいことがあるもんだ。
いつもその声を聞いたあとで
ドラマーがわたしを恨めしげに見るんだ。
そんなときは
わたしだって「しゃあ」とかすれた声で鳴きたくなる。