三匹の猫と一匹のドラマー その8

でもまあ
猫に言いたいことはそんなにたくさんないと思うんだ。
たいての場合
言いたいことはひとつだけ。
「おなか空いた」
「退屈だから遊んで」
あとは自由でいたいから何も求めない。
欲しいものを欲しいときに
的確にアピールする術を探しているってとこだろう。
あの電話の向こうの猫は
甘え上手なのに違いないよ。
だけど
あんまり鳴きすぎると逆効果ってもんじゃないの？
まるであちらがアメリカ人で
わたしのほうが沈黙と礼節を知る日本人みたいじゃないか？
あ
その性質が猫の場合にも当てはまるのかは知らないけど。
朝
おなかがとても空いたとき
わたしはドラマーに向かってぎゃあぎゃあわめいたりしないよ。
長年一緒に暮らしてきたわたしは
わたしにしか出来ないワザを持ってる。
それは
寝ているドラマーのおおきな胸に前足を置いて
トントンって2回たたくんだ。
それでじゅうぶん。
本当だよ。