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なにかあり/とくになし

三匹の猫と一匹のドラマー その9

ある年の冬。
一通の手紙が届いた。
例の日本人からで
近況を知らせる手紙と一枚の写真が入っていた。
ドラマーはそれを見て
とてもせつない顔をした。
わたしには文字は読めないけど
テーブルに置かれた一枚の写真はわかった。
わたしとおなじ種類の
つまり猫族の
黒毛の雑種猫。
ちょこんと玄関口に座って
カメラのほうを見ていた。
たぶん
玄関の向こうには帰ってくるだれかがいるのだ。
そんな写真をどうしてわざわざ送ってきたのか?
自慢じゃないのか?
でも
しげしげとそれを眺めて冷蔵庫にマグネットでドラマーが留めるのを見て
わたしにもことの次第がなんとなくわかった。
あの
にゃあにゃあとやたらに鳴いてた猫のことが。
わたしもおなじ猫としてすこしシュンとすることにしたが
そんなときにメグとフェデラルがまたいさかいをはじめたので
あわてて仲裁に走った。
そんなことがあれば
もう何が悲しかったのか
すぐに忘れてしまう。
それがわたしたち猫の救いがたい習性で
でも
そんなことが人間の救いになることもあるのさ。