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なにかあり/とくになし

三匹の猫と一匹のドラマー その11

突然家に乱入してきた酔っぱらいとおびえる日本人。
両者がまるでメグとフェデラルみたいにすくみ合っているときに
トイレの水を勢いよく流す音がして
ドラマーが飛び出してきた。
「おい! やめろよ! おれのたいせつな友だちなんだ」
うろたえるドラマーを見て
男はニンマリ。
「冗談だよ。おまえんとこに日本から客が来てたって知ってたさ」
あらためて紹介しようとするドラマーの声を聞きもせず
男はまくしたてるようにしゃべりだした。
どうやら男はブラジルに住む彼女の家から帰ってきたばかりらしく
現地で仕入れた素晴らしいブラジル音楽をドラマーに聴かせようと
この真夜中に立ち寄ったらしかった。
エドゥ・ロボだろ
トム・ジョビンだろ
聴かせたいのがいっぱいあるんだ。
そう言いながら
ポケットに差し込んでいた小瓶から酒をぐびり。
そしてハタ迷惑もかえりみず
男は勝手にCDプレイヤーをいじくって
音楽を大音量で鳴らしはじめた。
本当に迷惑なやつ。
あれ?
おかしいな。
ドラマーと日本人
あんなにいやそうだったのに
どうやらこの音楽にうっとりしちゃってるみたいだぞ……。