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なにかあり/とくになし

三匹の猫と一匹のドラマー その12

夜中の一軒家では
いつも大音量で音楽が流れていた。
わたしたち猫には
なにがどれくらいおおきな音で鳴ろうと
あんまり関係ない。
急にドガーンと爆発するような音楽にちょっとあせるけれど。
今日は昼間からドラマーと日本人はどこか遠くの店に出かけたみたいで
もう夜も遅い自分になって戻ってきた。
ふたりはすっかり上機嫌で
レコードの入った大きな箱を車から運び入れる。
ひと箱。
ふた箱。
その箱のうえに
すかさずわたしはちょこんと乗る。
ふたりはわたしなんかおかまいなしに
テレビとステレオのあるリヴィングに。
日本人が冷蔵庫から
最近お気に入りのビールのブルームーンを取り出す。
「今日見つけたあれ聴こうよ」
日本人はわたしをしっしっと追い払って
箱からレコードを取り出した。
これがこのふたりが
しばらく前から年に何回かやっている非日常みたいな日常。
バンド活動から半ばリタイアしたドラマーは
ときどき泊まりにやってくるこの日本人と一緒に
レコードの買付を手伝っていた。
これからまた
でかい音で真夜中のレコード・パーティーがはじまる。
わたしはあきれかえったように
ふにゃあと大きなあくびをした。