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なにかあり/とくになし

三匹の猫と一匹のドラマー その14

日本人とドラマーは基本的に英語で会話している。
アメリカの猫はやっぱり英語でしゃべっているのかな?」
日本人が大マジメな顔でドラマーに訊ねたことがある。
ドラマーはこう答えた。
「わからないな。
 でも、そうだとしたらおれの訛りになってるかもね」
すると日本人は言った。
「きみの訛りになっているのはおれだよ!
 しゃべりながら英語を習ってるようなものだから!」
イシシシシとドラマーは笑った。
「わるい言葉をたくさん教えちゃったかも」
「そうかなあ。おれが知りたがったからでしょ。
 ほら、あのこないだ行った店の、態度のわるい店員のことをさ」
「ああ、プリック(prick=イヤなやつ、ちんちん野郎)か!」
「それから、ケチ野郎のこと、なんて言ってたっけ?」
「チープスケイト(cheapskate)!」
「そう! そういうの教科書にないから、タメになる!」
「ごめんよー! わるい先生でー」
ふたりは爆笑した。
「チャビー(chubby)ってなんだっけ?」
「でへへ。おれやあいつのことだね?」
ドラマーがわたしを指差して言った。
「太っちょさ!」
よけいなお世話だよと言ってるような顔をわたしがしたんだろうか?
ドラマーがわたしを見て言った。
「こいつ、きっとおれたちの会話わかってるよ」