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なにかあり/とくになし

ア・スマイル・アンド・ア・リボン その2

イリジウム
レス・ポールが亡くなるまでの数年間
毎週月曜日にライヴを行っていたことでも有名だ。


それから、
つい何年か前までは
毎週日曜日のブランチ・コンサートはボブ・ドロウがやっていた。


ぼくはボブ・ドロウは見ることが叶わなかったけれど、
レス・ポールは一度だけ見ることが出来た。


イリジウムの夜のスケジュールは
きっちり決まっていて
毎晩8時と10時の2セット。


入れ替え制だが
客が望めば居座ってもよい(チャージは2回分払う)。


もっとも
ライヴは生き物なので
なかなか時間通りにことは進まない。
レス・ポールを見たのは
10時スタートのセカンド・セットだったが
結局すべてが終わったころには
夜1時近かったと記憶している。


それでも
長蛇の列をなすサイン待ちの客が切れるまで
89歳(当時)のレス・ポールはちゃんと接していて、
その肉体の頑丈さにおどろくと同時に
ミュージシャン稼業というものにまつわる覚悟みたいなものを
見せられた気がした。


そのイリジウムでのNRBQ
初日のファースト・セットは
時間の都合で見逃してしまったけれど
10時スタートのセカンド・セットには間に合いそう。


急ぎ足で階段を降りていくと、
ローディーのジャンジャンに出くわした。


99年以降の日本ツアーのすべてを担当した腕利き。
ジョージ・クルーニーを若くして
すこし酒にだらしなくしたような感じのイイ男。


英語では“John John”なので
本当は“ジョンジョン”と呼ぶべきなのだが
テリーもみんなも“ジャンジャン”と呼んでいるので
ぼくもそれにならっているというわけ。
最近はあちこちのバンドから声がかかってお忙しのはずだが
今回のツアーでもテリーのアシストをするんだな。


懐かしい顔を見て、
「いよー、ひさしぶり」とハグ。


「トムのことは残念だったな。
 テリーに会えよ。
 今しがたファースト・セットが終わったところだから」


なにげない言葉だが
ぼくはごくっとツバを飲み込んだ。


テリーと会う。
シラフで泣かずに会えるのかな、おれ。(つづく)