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なにかあり/とくになし

ねこに未来はない

「好きな本は?」ときかれたときには
長田弘の「ねこに未来はない」と
即答できる人間でありたいといつも考えているが
いざ、めったにないそういう機会が訪れると
ころっと忘れて別の本を挙げていたりする。


今年は
かならずそれを忘れないようにしよう。


新井薬師にて初詣したときも
欲張りにいろいろと神頼みをしたなかに
そのことを加えておいた。


「ねこに未来はない」とは
言葉だけをとれば
じつにまあ猫類に対して絶望的なタイトルみたいだが
そうではない。


猫には未来や明日というものが思考回路にない、
つまり、猫は今だけを生きているのだという
力強い肯定の言葉なのだ。


それは
どうしたって人間よりはるかに短い生涯しか生きられない猫の生き方と死に方への
力強い肯定であり
どうしたって愛する猫(ひとびと)との別れを(突然に)体験せざるをえない人間への
救われない感傷に寄り添う詩的な言葉でもある。


去年の秋に取材した
二階堂和美さんが言っていた高畑勲監督の言葉
「お客さんがこの映画(「かぐや姫の物語」)を見終わったあと、
 おそらくフラストレーションを溜める。
 そこを最後、二階堂さんの歌で
 どうにかしてほしいんです」
ともどこか重なる。


だが、そうとは受けとれないみなさんも世の中にはいるらしく
カスタマーレビューには
決して好意的とはいえない強い調子の言葉も並ぶ。


そういうのを読むとせつなくなってしまうけれど
各人それぞれに思いや評価はあるのだろうし
そのいちいちについてはここでは問わない。


きっと猫だったら
そんな言葉、屁とも思わん。


だからよけいに思う。
「ねこに未来はない」
いい言葉だなあ。


あ、
人間社会にも
似たような言葉ありました。
俺たちに明日はない」、ね。



本年もよろしくお願いいたします。
どういうスタイルで
どういうペースになるかわかりませんが
毎日書いてみようってハラです。