あまじょっぱいサンバ

“甘酸っぱい”はもう古くて、
今は“あまじょっぱい”なんだと
ラジオが言っていた。

これは最近流行の味覚の話で
甘さの中に酸味を感じるという程度ではなく
甘さとしょっぱさが対等な味というのが
求められているらしい。
そういえば、塩味キャラメルなんてのを
知り合いに食べさせられたな。

甘酸っぱいを英語で言うと
“ビタースウィート”。

ハーブ・アルパート＆ティファナ・ブラスの
「ビタースウィート・サンバ」は
日本では「オールナイトニッポン」のテーマソングとして
あまりにも有名だが、
本国アメリカではシングルカットされていない。

しかし、この曲にまつわる思いがけない映像を
you tubeで見ることができる。

デパートや遊園地、ホテルのラウンジなどに設置されていたという
お金を払って映写機の覗き穴のようなところから
映像を見るという60年代の機械
スコピトーンのために制作されたものだ。

プロモーション・クリップの
元祖のひとつだと言っていいだろう。

きらびやかなパーティー会場に
パーティー慣れしていないカタブツ男が現れ、
女子の気を惹こうとして数々のトラブルに見舞われる。

コイン一枚の設定時間（約3分程度か）の関係で、
曲は約2倍の長さに再編集してあるものの、
映像のツジツマはあっている。
そして驚くほどスタイリッシュ。

噂では、
この映像は無名時代のロバート・アルトマンの作品だと言われている。
アルトマンが亡くなってしまったので
真偽のほどは永遠に定かにならないが、
映像全体から匂い立つ群像劇風の空気は確かにそれっぽい。
ラストで使われる水中のギミックも
彼らしいと思わせるものだ。

なによりも、この映像の発するエグみは
“甘酸っぱい”では足りてない。
とても“あまじょっぱい”サンバになっている。