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なにかあり/とくになし

ハヤカワヨシオと「女の顔」

10日の夜、
夜中のDJの前に一度家に帰り
持ってゆくレコードの準備をしていたら
ツマが帰ってきた。


専門学校時代の友人たちと
国立近代美術館まで行ってきたのだ。


メインの目的は
同行した友人の勧める「ウィリアム・ケントリッジ展」だったらしいが、
サブギャラリーで行われていた展示の方が途中から気になり出し、
閉館間際に滑り込みで見てきたのだという。


「ハヤカワヨシオ展をやっててさー」


え?
国立近代美術館で早川義夫
確かにジャックスの音楽や存在をモダンアートだと
無理矢理言えないこともないような気もするけど
それは思い切ったというか
だいたいツマは早川義夫のこと好きだったっけ?


はてなマークを頭にいっぱい浮かべつつ
ツマが買ってきた図録を見せてもらうと
あっさり謎が解けた。


彼女の言っているのは
元ジャックスの早川義夫ではなくて
去年92歳で亡くなったグラフィックデザイナー
早川良雄だったのだ。


早川良雄ー“顔と形状”ー


鮮やかな色彩を駆使した水彩ポスター「女の顔」シリーズは
ぼくも80年代の広告などで
目にしたような記憶がある。


おどろくのは
早川さんの代表作と言われるこのシリーズが
氏が70代を迎えようという時期に制作され始めたのだということ。


図録をめくると
20世紀半ばに制作された
超モダンで鋭いセンスのポスター群に
最初は目を奪われる。


だが、
それらのシャープな作品群での
「どうだ!」と見得を切る若さや鋭さに対して、
「女の顔」シリーズには
刃物めいた切れ味はない代わりに
じわっと心をむしばむ浸透力があった。


淡いようでいて
見て来た顔の数だけ
奥行きが深いというか。


その図録のせいで
ぼくがDJ用に選ぶレコードも
途中から傾向が変わったような気がする。


ちなみに
「女の顔」と聞いて
今真っ先に思い浮かぶジャケットは
これしかない。