何だか完璧な休憩

夕方、
どうしても牛丼が食べたくなり
「ちょっくら30分ほど休憩してきます」と言い残し
ハイファイを出た。

向かう先は
渋谷駅ガード下の吉野家。

その途中で
そう言えば「鈴木先生」（アクションコミックス）の新刊が出ていたなと
文教堂書店に立ち寄り。

店を出て、
横断歩道を渡ろうとすると
交差点名物のアンケートおばさんと目が合う。

やべ。
来たよ、来た。

「あなた！　歳いくつ？」
運命のひとに出会ったがごとき勢い。
40歳で既婚だと答えると
「ぴったりよ！」
ほんまかいな。

5分ほどで終わる簡単な調査ということで
牛丼にも影響はなかろうと
引き受けることにした。

横断歩道をわたり、
小雨の降る中、
街路樹の下で質問に答える。

謝礼は図書カード。

さて、
気を取り直して牛丼だ。

ずかずかと店内に踏み込んで
左右の客席を物色。
奥の角に一席見つけた。
角は面積がやや広いのだ。

「並、つゆだくで」

「イーカンナミイッチョーツユダクデー」
とアルバイトの女性が言い終わらないぐらいの早さで
どんぶりが運ばれてきた。

さあ食うぞ……と、
箸でひとすくいした瞬間、
横から肩を叩くやつがいる。

なにやつ？
振り向くと
あら、あなたは
浜野謙太さん。

なんとぼくの向こう正面で
牛丼サラダセットを食べていたのだ。

席が空いたので
隣に移動して
連れ牛丼した。

もぐもぐ
在日ファンクのＣＤが……。
もぐもぐ
NewdayもＣＤが……。
もぐもぐ
サケロックは年末にライブが……。
もぐもぐ
安土城の映画がクソで……。
もぐもぐ
そのほかもろもろ……。

つもる話もあるので
近々飲もうと約束して
吉野家を出て左右に分かれた。

さて
ポケットにはさっきもらった図書カード。
どうしようか。

というわけで
帰りにもう一度文教堂に寄って
星野源「そして生活はつづく」（マガジンハウス）を買い、
すたすたと何事もなかったように店に戻った。

この間わずか30分。
それは何だか完璧な休憩。