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なにかあり/とくになし

虫と歌

朝起きたら
O関監督から携帯にメールが届いていた。


内容はシンプルなもの。


市川春子の「虫と歌」が凄いですよ」


○×がいいですよとか
▲■がやばいですよとか、
そういう推薦や進言、
タレコミの類を受けることは少ないほうじゃないが、
心をすっと動かされるのは
結構タイミングの問題だったりする。


タレコミが響くには
タイミングも必要なのだ。


朝イチで
市川春子


いや、メールを打った本人は
真夜中に市川春子のつもりだったかもしれないけど。


いつもの書店で「虫と歌」(アフタヌーンKC)は
武士道シックスティーン」の横にあったのを覚えていたから
出かけに入手した。


オノナツメからもっと線を差し引いたようなタッチで
いや、あるいは
かつてクラスの誰かが大学ノートに
ひそかに描き溜めていた自作漫画のようなタッチで
彼女は線はとてつもなく細いのに
芯はしっかりと太いストーリーをつづっていた。


衝撃的なデビュー作とされる「虫と歌」をはじめとした
4本の短篇のうち3本を
一気に読んだ。


肩を壊した高校球児と
異界から来た妹との交流を描いた「日下兄妹」で
あやうく泣いてしまうところだった。


大のおとなを泣かすんじゃないと
監督に抗議のメールを打った。


SF漫画に分類されるべき作品集だし、
現実と異世界が同居……というテーマは
漫画にとっては珍しいものではないけれど、
この漫画にはびっくりさせられるほど珍しい感じがある。


なんだろうか。
人間にとって自覚出来る時間や人生とは
本当はフィクションの世界ほど事細かでも、色鮮やかでもなく
記憶のもやの中でデフォルメされて
とりとめもなく消えてしまうようなもので
だからこそ愛おしいということを
彼女がちゃんと描いているからだろうか。


電車の中で
一日読んだだけじゃ
まだわからないね。


4本のトリを務め、
彼女のデビューのきっかけとなった作品「虫と歌」は
まだ読んでいない。
読むのがちょっとこわい気がするが
明日読むことになるだろう。


ちょっと古風な名前のせいもあって
岡田史子のことを
ぼくは思い出した。
(追記:高野文子からの影響も
    多く取り沙汰されているそうだ)


うつくしい加工をほどこした装丁
市川さん自身が手掛けている。


夜は代々木に
クレイジーケンバンド小野瀬雅生ショウのキーボード奏者
高橋利光さんを讃えるライヴ・イベントに出掛け
高橋さんの所属するプログレ・インスト・バンドKBBと
小野瀬雅生ショウのライヴを見た。


燃焼。