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なにかあり/とくになし

ア・デイト・ウィズ・バンヒロシ その7

「おとな一枚、800円ですね」


バンちゃんの誘いに乗って
いい歳こいたおとな4人、
朝っぱらから東寺見学をすることになった。


ぼくは片手でレコードの詰まったトランクを引っ張ったまま。


たぶん
東寺の講堂を訪れた見学客のなかで、
今日のぼくほどレコードを持って入った者はいないはず……と
わけのわからない感慨を覚えた。


そうか。
ここの帝釈天(国宝)は象さんに乗っかっているのか。
この日は五重塔の内部も
春秋の限定公開期間中ということで見ることができた。


しかしまあなんだ、
限られた時間しか京都にいられないんだから、
さっさとレコード屋行きましょうよとか
そういうお願いをしたっていいんだが
バンちゃんといると不思議とそういう気分が起きない。


効率的に考えれば
完全に無駄な道草であるはずの行為が
なくてはならないものに思える価値の逆転みたいなものが
自然と起こってしまうのだ。


五重塔を出て
庭園を歩いているあたりで
ふたたびK脇くんから携帯に着信。


コールバックして
ランチの約束をとりつけた。


Y内さん、S上さんとはここでお別れ。
バンちゃんとタクシーでJET SETに向かうことにした。


車中、
こないだ
あるフェスでヴェンチャーズを見たことを
バンちゃんが話しだした。


「チケットを買うてなかったから
 とりあえず外で音が聴けたらええわと思って行ったんやけど
 なんか会場の脇のところにちょっとだけすき間が空いてるのが見えて。
 そこから入れそうやと思って先に進んだら
 気がついたら前から5列目にいたんや」


気がついたらマーク・ボランに会うてサインもろうてたんや。
気がついたらユーミンとお茶してたんや。
気がついたら「an an」で連載してたんや。


昨日の晩
バンちゃんから聞いた数々の奇跡的な話とおなじように
またしてもバンちゃんはたなぼたのように
幸運を手に入れた。


現代を生きる音楽界のわらしべ長者
しかし、その痛快さは
バンちゃんが
その小さなすき間から見える何かを信じて
わずかな光に見とれて
前に進んだからこそ
ころころころんと転がりこんできたものなのだ。


ミーハー。
いや、もうちょっとうまく言いたい。
見とれる力、惚れぢからとでも言うのかな。
会ったとたんにひとめぼれ、なんて言ってるようじゃ甘ちゃんで、
会わないことにゃひとめぼれも出来ないんだってば。


タクシーが河原町三条の交差点に着いた。
「ここでいいです」
そう言ってお金を払おうとすると
運転手のおじさんが
「あ”〜!」と叫んだ。


「お客さんの話がおもしろうて聞いてたら
 メーター入れるの忘れてたわ〜!」


わらしべ長者バンヒロシ、
ここでも実力を発揮!(つづく)


ア・デイト・ウィズ・バンヒロシ その7 松永良平


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「GARDEN」@恵比寿tenement、
今月も終了しました。
みなさまありがとうございました。


今年の「GARDEN」はこれで終了です。
来年はまた1月からやろうと思ってますが
日程など詳細決めたら告知します。


そして来月は
恒例のパーティー「Encore!」を開催します。
今回は駒場東大前にお引っ越し!


「Encore!」Xmas Special
12/11(土)@駒場東大前ripple
19:00-28:30
charge \1500(ドリンク別)


DJ:内田靖人、大好俊治、樺沢衝一、藤瀬俊、松永良平
ゲスト:大江田信、小西康陽常盤響、平林伸一


オールナイトで敢行しますので
みなさまよろしくお願いいたします!