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なにかあり/とくになし

ア・デイト・ウィズ・バンヒロシ その8

タクシーの運ちゃんが
バンちゃんの話にうっかり聞きいってしまったため
“言い値”で支払いを終え、
JET SETのビルへ。


ご厚意で事務所の隅に荷物を置かせてもらい、
晴れてフリーハンドに。
そのまま旧知のK脇くんも含め
みんなでランチに繰り出した。


「どこがええやろ?」と問うバンちゃんに
K脇くんは
「並んでるかもしれんけど
 スマート珈琲の2階がええんちゃいますか」と答えた。


「スマート珈琲は、あれやで。
 “お嬢”がクリームソーダ飲みに行きよった店」
バンちゃんが耳打ちしてくれた。


京都太秦で毎週のように映画を撮影していたころのひばりさんは
車を飛ばして寺町通りまで来ては
クリームソーダでひとやすみしていたらしい。


「来たら二階に上がってたって話やけどな」


現在は
茶店営業は一階のみで
ランチタイムのみ二階を開放しているのだという。


紅葉がはじまる季節の日曜日、
行列は思ったほど長くはなかったが
やはりすこし待つという話だった。


JET SETからは昼休みで出てきてもらっているので
あまり待ち続けるわけにもいかない。


「そしたら
 アローンはどう?」
「ああ、オムライス」


京都者たちのあいだで符牒めいた短い会話が交わされ
急遽市役所脇の喫茶店、アローンに
行く先を変更することになった。


スマート珈琲を名残惜しく眺めていたら
バンちゃんがひとこと。
「ここはプリンもおいしいねん。
 500円するけどな。
 あとでまたプリンしに来てもええかもな」


“プリンしにくる”!
そのチャーミングな言い方に
胸がビュンと高鳴った。


おっと、これ
50代と40代の男子の会話ですけど。


アローンはオムライスで有名な店で
鏡もちの一番下のやつを黄色くしたというか
オーストラリアの巨石を見るような
ものすごいボリュームなのだが、
周りを見ると
ごく普通のおじさんや若者、
アベックの方々が
ぞくぞくとオムライスを注文していた。
昼からあんなに食べたら
普通動けんようになると思うんだけど……。


ためらいつつもツバを飲む。


しかし
減量中ということもあり
涙をのんでビーフカレーを注文。


それに
あとで“プリンしなくちゃ”いけないからさ!


ア・デイト・ウィズ・バンヒロシ その8 松永良平


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当ブログの読者のかたにもおなじみ(?)
キングジョー+須田信太郎漫画
新作完成です!
こちらへどうぞ!


なんと今回は
ぼくのような人物も登場してまして……(寝グセばっちり!)。


漫画家のかたに
自分を描いていただけるなんて
これ以上の光栄はないです!


それに今回の「素振り暮らし」!
哲学的なくらい
おもしれえ!