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なにかあり/とくになし

感激! 偉大なるライノ! その11

mrbq2010-11-01

カズー・オーケストラの歴史的なライヴ(5分間の)が終わり、
ほうぼうへのあいさつに忙しいリチャード・フースを
ぼくのほうにうながしてくれたのはハロルドだった。


リチャード・フースと
ハロルド・ロビンソン。


かつてはこの界隈で見慣れたツーショットなのかもしれないが
ぼくにとっては初体験で
どきどきを隠せない。


あー、えー、日本から来ましてー……と、
ハロルドのとき以上にしどろもどろなあいさつをする。


まずはふたりに
とにかくサインをもらわないといけない。


テンプルシティ・カズー・オーケストラと
カズー・ブラザーズ、
2枚のアルバムを見せると、
「どこにサインしてほしい?」と
リチャードが訊いてきた。


「どれがあなたがたかわかるように」


「オーライ」


リチャードは赤マジックを手に
カズー・オーケストラの集合写真に
自分の顔をわざと塗りつぶすようにサインした。
カズー・ブラザーズでは向かって右の
片膝をついているのがリチャードだと
今回はじめて判明した。


「わたしはカズー・オーケストラには参加しましたが
 カズー・ブラザーズではないんです」
ハロルドはそう言って
裏ジャケの小さな写真にサインをしてくれた。


「じゃあ、この左側のひとは誰なんですか?」


ぼくのまじめくさった質問が間抜けだったのか
「今日は来てないなー」とリチャードは笑い、
まただれかにあいさつをするためにその場を立ち去った。


残ったハロルドに
ずっと気になっていた質問をぶつけてみた。


「そもそもなぜ今復活なんですか?」


「ああ、
 リチャードが今度ニューヨークに家族で引っ越すことになったからですよ。
 彼はずっとこの近所に住んでいたんですが。
 それでこの大掛かりなフェアウェル・パーティーをやることになったんです」


そうだったのか!
この2週間におよぶ催しは
ライノ創設者リチャード・フースの
大いなる送別会だったのだ!


「カズー・オーケストラで演奏していたのは
 リチャードの家族ですね?」


「ええ、
 ふたりの娘さんと奥さんも今日一緒に出てました」


「これでカズー・オーケストラは見納めになるんでしょうか?」


「(笑)どうでしょう?
 70年代にはいくつかのパーティーに呼ばれて演奏しました。
 今日のライヴは30何年ぶりでしょうね。
 今年のイベントが好評だったから来年もやるかもしれませんが、
 いずれにせよリチャードはもうすぐいなくなってしまうんです」


そんな話をしていたら
ルーベン&ザ・ジェッツのヴォーカリスト
ルーベン・ゲバラの歌がはじまる時間になった。


「じゃあまた」


「またカズー・オーケストラが復活するときは
 連絡してください」


「もちろん!」


力強く握手して
ハロルドは懐かしい仲間たちの待つバックルームへと向かった。


ちょうどドライバーのYさんとフジセも
観光から帰ってきたところだった。


「え? もう終わっちゃったんですか?」
Yさんは虚をつかれたように驚いていた。
ぼくがあれほど声高に喧伝していたものだから
もっと長い時間演奏するものだと思っていたらしい。


テンプルシティ・カズー・オーケストラ
ライヴ・イン・ライノ2010。
演奏時間約5分。
観客30名くらい(店員含む)。


演奏曲目
2010年カズーの旅
胸いっぱいの愛(カズー)を


(おわり……と言いつつ、あと一回だけ、つづく)


感激! 偉大なるライノ! その11 松永良平