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なにかあり/とくになし

にがうまい本

「僕の音盤青春記 1971-1976」牧野良幸(音楽出版社)は
「CDジャーナル」の巻末で
ひそやかに連載が続いているイラスト・エッセイの単行本化。


“イラスト・エッセイ”と言ってはみたが、
この肌触りはもっと“直(じか)”で泥臭いもの。


地方でロックを聴きながら中高生を過ごした者には、
細かい描写のひとつひとつが堪えられない。
筆者の心情の吐露はモロ出しすぎるのだ。


ぼくと牧野さんの年齢や体験を比較すると、
生年もちょうど10年違い、
体験もやはり10年ほどずれている。


だが、牧野さんはロック史を
さも自分がすべて知っているというような態度に頼らずに
徹底的に自分史として描いている。
だから体験は違っても、心の反応がシンクロするのだ。


この良薬は苦い。そして旨い。にがうまい。
ぼくも、ひとりの地方の中高生だったという
リトマス試験紙が赤になる。