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なにかあり/とくになし

スモール・サークル・オブ・フレンズのセカンド・アルバム

からあげスティック(おやつ)を食べ終えたところに
とんでもないものが届いた。


いや、正確に言うと
濱田高志さんが
わざわざ持ってきてくれたのだ。


食べてる途中じゃなくてよかった。
きっとビックリして喉につかえて
今頃おだぶつだったかもしれない。


袋の中からさりげなく取り出された一枚のサンプルCD。


ロジャー・ニコルズ&スモール・サークル・オブ・フレンズ
 約40年ぶりのセカンド・アルバムです」
と濱田さんは言った。


それはオリジナルの3人による
本当の本物のセカンド・アルバム「フル・サークル」だった。


驚くべきことに
中身も本物だ。
つまり、
少しのひいき目も
偽装した懐古も
無理した現役感も必要のない
あの永遠のスモール・サークル・オブ・フレンズだ。


濱田さんとロジャーの長年続く文通の一節から判明した
ロジャー家でのマクロード兄妹とのセッションを軸に
一年半の間、極秘裏に進められたこのプロジェクト。


ブライアン・ウィルソンの「スマイル」は
世界中の誰だって知っている。
あの再現版「スマイル」では
その実現に多くの人が血道をあげた。


だが、広いアメリカの
ポップスの長い歴史の中で
ロジャーと友人たちの小さなグループが68年に作った傑作について
かえりみるひとはあまりにも少ない。


彼をたたえ、日本から具体的な言葉で励まし続け、
作品化の道しるべをつけた濱田さんがいなかったら
この作品は
陽の目を見ることがなかった。


アメリカン・ブリードにロジャー・ニコルズが提供した
「オールウェイズ・ユー」を
彼らのハーモニーで聴くことができる。


そして、
オリジナルのシングルでは
セッション・シンガーを起用していた
名曲「ザ・ドリフター」が
40年経ってようやくオリジナルの3人で歌われている。


半透明なハーモニーには
彼らが生きてきた分だけの色が
ごくうっすらとにじんでいて、
それは“透明”と言い切ってしまえる完成度よりも
ずっと尊い何かだと思えた。


「泣ける」と言いたくなったぼくを制して
濱田さんが
「音が届いて初めて聴いたときは泣きました」と言った。


この音のクオリティと
人生における継続の尊さと
不意にぶりかえす青い魂の織りなすドラマに
涙を流す感受性は
ポップス・ファンとかマニアの領分だけでなく
どこの誰にでも宿っていると信じたい。


12月19日にビクターより日本発売となる
「フル・サークル」を待ちましょう。


まずは告知まで。