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なにかあり/とくになし

CDと米粒

渡辺ペコ「ラウンダバウト」を
年が明けてもときどき読んでいる。


印象的なシーンがある。


主人公の姉が妹にCD(長渕のベスト)を借りようとするのだが、
ケースを開けると中身は紛失していて、
代わりに米粒がポロンと出てくる。


こういう場面でCDが無いという部分にも
リアリティがありありなのだが、
米粒ポロリにも妙な親近感が湧いた。


実際、
あのCD、
あのレコード、
どこへ行ったの?
と呼びかけたくなる場面、
他人は知らぬがぼくは頻繁。


DJ用に重い思いをしてレコードを持っていって
中身空っぽなんてことも一回や二回ではない。


ちゃんと整理しないからじゃん。


いや(心の声は無視して)、
ことの本質は
CDやLPの代わりに米粒ポロンの状況を
平然と受け止めるか否か。
そこんとこにひとつの分水嶺はある。


そして、ぼくは結構OKなのだ。
今は隠れてるけど、
きっとどこかにいるんだよとかまえる。


物質であるはずの音盤が
ついに生命を持ったかと考えてみれば
気が楽になるどころか
うれしくすらある。


米粒はそいつがいた痕跡であろう。


ま、たまには
戻ってきて元気な顔(音)を見せて欲しいもんですが、
中には失踪してしまったのもいるようで。
どこかで元気に鳴っているのか。
これが本当の音信不通……。