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なにかあり/とくになし

アレックス・チルトンが死んだ

アレックス・チルトンが死んだ。


現地時間の3月17日で
死因は心不全
59歳だった。


最近の写真を見ると
とっくに60歳を超えていそうな老人顔になっていたから
普通の59歳の人生ではなかったはずだ。


DJをするとき
アレックス・チルトンのアルバム
「ルース・シューズ&タイト・プッシー」は
いつも候補に入る。


あのレコードをかけるかどうかということよりも
あのレコードがバッグに入っているかどうかということが
ぼくにとっては大事だったりした。


オースティンのロック・バンド
スプーンの新作「トランスファレンス」の
ジャケット写真が素晴らしいと見とれていたら、
あれはウィリアム・エグルストンの作品なのだと教えてもらった。


メンフィス在住の写真家
ウィリアム・エグルストンの作品で
現代のロックファンにもっとも有名なのは
ビッグ・スターのセカンド「レディオ・シティ」のジャケットだろう。


ビッグ・スターから
ソロ活動に至るまで
アレックス・チルトンの美意識の一端には
つねにウィリアム・エグルストンの世界観が
どこかでかかわりあっていたようにも思う。


からからに乾きながらまだ濡れる。
そんな感じ。


ひとがこの世からいなくなるのに
良い死因なんて言い方もあったもんじゃないが、
アレックス・チルトンにとって
心不全という突然の人生の終わり方は
ふさわしかったという気もする。


よけいな感傷を拒否して生きた彼にとって
しみったれたさよならなんて
似合わないじゃないか。


訃報を聴いて
反射的に流れた劇的なメロディは
ビッグ・スターの「バック・オブ・ア・カー」だった。