五番目の季節
夕方
渋谷の町に出ると
暑さが変わったとはっきり感じた。
何年か前に行った
バンコクで感じた
逃げ場のない湿気。
汗のなかを歩いているようなあの感じに
ついに西から追いつかれてしまったのだ。
ただ
その反面で
夜になると
気温としては熱帯夜なのかもしれないが
はやくも夏の終わりの気配があるのも確かだ。
涼しくなった！
そう言い切るだけでは足りない
なんとも言えないさびしさが
夜の空気に
じわじわっと忍び寄りはじめているのだ。
猛暑猛暑と言いながら
それは
西から来た新しい夏がむちゃくちゃに暴れただけで、
結局
ぼくたちがかつて知っていた夏は来ないまま
今年の夏は
意外と早足で終わっていくような気もする。
つまり
今この季節は
夏のふりをしたなにか別のものだというのが
ぼくの実感なのだ。
この五番目の季節には
なにか違う名前が必要なのかもしれない。
