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なにかあり/とくになし

成人の日、寒い夜道を帰るの記

成人の日は寒くなると聞いてはいたが、
しっかりと冷え込んだ上に
北風も強くて。


いやまあこれが冬なんだし
零下でもないのに
ぶるぶる震えていたんじゃ
東京以北のみなさま、ごめんなさいだ。


寒かったら
その分せいいっぱい歩け歩け。
甘えんな、ぼけ。
やせるぞ、おら。


そんな感じで
心で自分をののしりながら
夜道を早足で帰った。


知らないひとが見たら
喧嘩のあとの彼氏かと思うほど
むっつり黙々と。


まあ実際は
そんなに黙々としていたわけじゃないか。
両耳のヘッドホンからは
爆音で音楽が鳴ってるから聴こえねえよ!(ゆらゆら帝国で考え中)
みたいな。


ところがそのうち
iPhoneのヘッドホンの左側が
ぷ・ぷ・ぷ・ぷぷぷと途切れがちになったかと思うと
そのうちまったく何も鳴らなくなった。


どうやら
何かが壊れたらしい。
問題はそれがどっちなのか、だ。
ヘッドホンか?
iPhoneか?


立ち止まってしばし思案。
ま、帰って確かめるしかないか。


そう観念して
ヘッドホンをしまい
今度は無音で歩き出した。


それにしても寒い。
早足で空気を顔に受けながら歩くと
鼻水がしょぼしょぼと出てしまうし、
目もうっすらとかすんで見える。


ふと目にしたどこかの店のシャッターに
休暇告知の貼り紙。


「本日はお休みさせていただきます。 店主激白」とある。


そうかー、
大声で激白したくなるほど疲れたのかー。


一瞬納得しそうになって
思わず首を振る。


“激白”じゃないだろ。
“敬白”だろ。


寒さと目のかすみがもたらした自分の錯覚に
ひとりでにやにやした。
その分だけ
すこし頬が温もった気がした。


“店主自白”とか
“店主告白”とか
いろいろあってもおもしろいのにね。


“店主淡白”なんてのもいいかも。
何事にも執着の薄い店主の店、なんつって。
“店主漂泊”だとしたら
心ここにあらずな店、とか。
“店主外泊”なんてのも、ありですかね。


ああ、頭のなかがさわがしい。


頭のなかの登場人物たちが
ばかすぎて
成人の日に申し訳ない。


家はもうすぐそこ。
かばんのなかには
泉昌之食の軍師」(ニチブンコミックス)
伊図透「おんさのひびき」3巻(アクションコミックス)が入っている。


結局壊れていたのは
ヘッドホンでした。
ああよかった。