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なにかあり/とくになし

父のちょっと奇妙でちょっとかわいい教育法について

いつも取材記事やレビューを書いている
「CDジャーナル」で
新連載をさせていただくことになった。


タイトルはまだ内緒だけど
テーマは決まっている。


漫画と音楽。
漫画1冊とCD1枚にちなむコラム。


これまで2回ほど
本誌企画で書いてきた「ロックと漫画」コラムの
スピンオフというかブラッシュアップというか。


いずれにせよ
好きなものを題材に
好きに書いていいという依頼は
ライター冥利に尽きる。
ありがたい話で興奮した。


ぼくと漫画のかかわりを振り返るにつけ
最近よく思い出すのは、
父は
漫画に熱中する次男坊(ぼく)を
よしとは決して思っていなかったことだ。


小学校から高校卒業してひとり暮らしを始めるまで
「良平さんもそろそろ漫画は卒業して……」というフレーズを
何度聞いたかわからない。


馬の耳に念仏。


だが、
ぼくが漫画好きになったことには
実は父にも一因がある。


反対されるからムキになって好きになったとか
そういう話じゃない。


父のちょっと奇妙で
ちょっとかわいい教育法について。


ぼくが子どものころは
まだ学年雑誌というものが
割とおおきな勢力を持っていた。


いわゆる
「よいこ」とか「小学三年生」とかのこと。


それぞれの学年にあわせた
軽い読み物やグラビア、漫画で構成されていて
いろいろな付録もついていた。


小学二、三年生くらいだったかなあ。
どういうわけか
ぼくは実際の年齢よりひとつ上の学年誌
買い与えられるようになった。


みんなが「小学三年生」を読んでいるのに
ぼくは「小学四年生」を読んでいるのだ。


たぶん
まわりより一年先の知識を身につけさせようという
ソフトな英才教育のつもりだったのかなと思う。


残念ながら
その目論みは
学問の面では当たったとは言い難かった。
しかし
父には
ぼくがその教えを
よろこんで受け入れているように感じられたはずだ。


そりゃそうだ。
まわりの友だちとは違う「ドラえもん」を
違う連載漫画を
ぼくだけ読めたんだから。
もちろん
友だちの家で
ちゃんとリアル学年の号も読むから
期せずして
こと学年誌に関する限りでは
ぼくは2学年分の漫画を読むことが出来ていた。


頭を良くするつもりが
2倍の漫画を摂取させていたなんて!


とりかえしのつかないことって
結構なごやかに起こっているものなのだ。


そのうち
ぼくもみんなも
少年チャンピオン」や「少年ジャンプ」を読むようになったし、
漫画だけを集めた「コロコロコミック」などの登場によって
学年雑誌の全盛時代はゆるやかに終わっていく。


だが
ぼくの漫画好きには
父の作戦によって
物心がついてしまう前に受けた影響が
やっぱり大きく物を言っているように思うのだ。


何よりも
そういうちょっとかわいい(たぶん実効性も低い)教育法を思いついて
嬉々として実践するあたり
血筋としか言いようがないんだな。


父には
とても感謝をしている。