アイ・ラヴ・混線
実家は九州。
昔(20数年前)、
深夜にAMラジオを聞いていると、頼みもしないのに、
アジアや西日本のあちこちから電波が飛んできた。
そのうち、友だちの間で、大阪のMBSが受信できるぞ、という話になり、
「MBSヤングタウン」(通称“ヤンタン”)を聞き始めた。
昼間は電波の“飛び”が弱く、
夜にならなければ、まともに聞こえない。
あくまで「ヤンタン」の前座として聞いていた阪神戦で、
解説者の安藤統男の、
「うーん、次はピッチャーはカーブを投げる気がしますねえ」
というオフビートな予言解説や、
三宅アナウンサーと坂東英二の、
延々脱線を続ける外野席のおっさんの会話のごとき中継のせいで、
ぼくは阪神ファンになった。
しかし、せっかく阪神が好きになっても、
試合開始直後は放送がほとんど聞こえない。
ようやく7時半を過ぎたあたりで何とか聞こえるようになると、
「4回裏を終わりまして、0対7、中日のリードであります」
というような試合を、あの頃、阪神はよくやっていた。
ちょっとラジオの向きを変えると、
「ハンニャーホンニャー……」というような感じで、海の向こうの音楽が乱入してくる。
うわ、勘弁してくれ! とあせりながら、何とか電波を再キャッチすると、
ホームラン打たれてたりね。
まあ、野球の話がしたいんじゃない。
ただ、ぼくにとっての野球の醍醐味とは、電波の混線がセットになっているフシがある。
そして、それは野球に限らない。
混線こそを愛している。
おそらく。今後も。願わくば。