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なにかあり/とくになし

総武線 VS ボブ・ディラン

帰りはいつも総武線
新宿から乗り込むと、
どこからするのか、聴き覚えのあるハーモニカの音。
誰かのヘッドホンから漏れ聴こえしている。


それはボブ・ディランの「雨の日の女」だった。
アルバム「ブロンド・オン・ブロンド」の一曲目。


音のする方に、
ヘッドホン着用者は少なくとも4人。


眼鏡をかけて本を読む長髪の女子(起立)。
40代後半だろうかと思われる大柄なサラリーマン(着席)。
革ジャンを着たいかにもロック印青年(起立)。
くるり系眼鏡青年(起立)。
見た目で言えば、彼が一番若い。


数メートル離れたぼくの耳にも届くくらいだから、
これはかなりの音量だ。
鬱憤を反映させた音量かもしれない。


ハタ迷惑だと言えば言えるのだが、
この時代、これもひとつのライヴ体験なのだと
言ってみたりもする。
少なくとも、ぼくの意識はこのとき
総武線 VS ボブ・ディラン」というイベントの
客席に座った。


東中野、中野を過ぎても、まだ変化は見られない。
そして高円寺。
皮ジャンと眼鏡女子が降りた。


すると、音が止んだ。
なんだ、やっぱり高円寺住人か。
ありていな展開に少しがっかり。


だが、電車が動き出したそのとき、
うっすらと2曲目「プレッジング・マイ・タイム」が聴こえてきた。
ちょうど曲間だったのだ。


ぼくは阿佐ヶ谷で電車を降りた。
サラリーマンか、くるり系か、
何曲目まで彼らは乗り続けるんだろう。
青梅あたりまで行けば
「ローランドの悲しい目の乙女」までたどり着けるかもしれないけど
そのときは三鷹で中央線に乗り換えだよ。


「東京膜」渡辺ペコ集英社クイーンズ・コミックス)。
やられた。面白えじゃねえか。