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なにかあり/とくになし

「少女漫画」を読む

いつも読むのを楽しみにしている
columbia*readymade HPの「レコード手帖。」にて
ぼくの5回目の原稿が掲載されました。


お目通しいただけますと
さいわいです。


松田奈緒子という漫画家のことは
たぶん、表紙は見かけて気にしていたのだが
読んだのはつい最近のこと。


その名も
「少女漫画」(クイーンズコミックス)という作品集がそれ。


ズバリのタイトルになったのは、
この短篇集のコンセプトが
少女たちに愛され
作者に少なからず大きな影響を与えた
名作少女漫画へのトリビュートというものだから。


採り上げられているのは
ベルサイユのばら
ガラスの仮面
パタリロ!
あさきゆめみし
「おしゃべり階段」
この5作品と
ラストは作者オリジナルの「少女漫画家たち」。


設定や筋立てをいたずらになぞるのではなく
現代を舞台にした現実と巧みにリンクさせた構成がいい。


いや、
“巧み”と書いたけど、
松田奈緒子のやり方は
実はあんまり巧みではない。


気負って
思いあまって
ときどき
書くべき話を
書きたい話が乗り越えてしまう。


でも、そこが何よりいいんだ。


強引さすら感じさせる絵柄は
作者の迷いや躊躇さえもがんがんと描き出し、
心をつかむ。


ラストの「少女漫画家たち」は
すべての少女漫画家さんと
少女漫画家に憧れたひとたちと
少女漫画を読んでしまうひとたちと
少女漫画に限らず
すべてのかつて何者かになりたかったひとたちの心を
ざらついた手で荒々しく削り、
ひりひりとさせる。


しかし、そのざらついた手でしか
出せないやさしさというものがあるのだろう。


漫画を愛したまま
死んだ従姉に
今一番読ませたい漫画だと思った。