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なにかあり/とくになし

どうも睡魔せん

アメリカにレコードの買付に行くのが
ぼくの重要な仕事のひとつ。


そして、それは時差ぼけとの闘いでもある。


日本とほぼ反転した時間帯では、
いつも夕方にきまって睡魔がやってくる。


そしてその魔力には抗し難い強さがある。


自分ではちょっとしたまばたきのつもりでいても、
横で運転している大江田さんの証言では
それなりにグースカと眠りこけているらしい。


眠りはじめるとすぐにイビキをかきはじめるのも
大きな特徴であるらしい。


中野の弟が
ちょくちょく“夢の旅路”と言う名の
電車の乗り過ごしをしでかしているが、
兄弟の血は争えないのだった。


時差ぼけのせいではないが、
睡魔が起こした失態のひとつで
忘れられないのは
歌舞伎座事件だ。


15年ほど前、歌舞伎にのぼせていた時期があった。


何かの用事で母親と叔母が一緒に上京することになり、
何か観光をということで
中野の弟と一緒に歌舞伎見物を仕込んだ。


ふんぱつして
一階の良い席を取った。
当時としてはかなりの出費だ。


歌舞伎座の昼の部は
朝11時から始まる。
これがぼくの当時の生活時間帯としては
結構つらかった。


何幕目だったか、
弟がふと横を見ると
ぼくの様子がおかしい。


不自然にアゴを突き出し気味にして
目を半開きにしているのだ。


こんな場面で寝てはいかん。
歌舞伎好きを気取っていながら
このていたらく。


必死の抵抗を試みながら、
睡魔に負けてまどろみはじめる
まさしくその瞬間を彼の目はとらえていたのだった。


その顔は
見たこともないくらい
幸せそうであったという。


この一件は
今にいたるまで弟がぼくをやりこめる際の
見事な必殺技となっている


時差ぼけは
当然帰国後もつきまとう。
アメリカでそうなったように、
日本でも夕方過ぎると、おねむの時間。


夕方になると
ハイファイの床にごろんと寝転がったり、
カウンターで
不自然にアゴを突き出している松永良平が見られるかもしれません。


明日(3月5日)、
買付から帰国します。