mrbq

なにかあり/とくになし

I met you in my dream last night.

大学で上京してから
3年間ほど東池袋のアパートに住んでいた。


風呂なし、台所なし、
トイレ共同、電話も共同。
しかし
大家さんのご厚意で
光熱費および電話代が無料。
家賃も山手線圏内としては超格安の3万円ぽっきりだった。


入り口からつづく廊下の左側に
部屋がふたつ並んでいて、
ぼくの部屋の隣には
同い年のおとなしそうな大学生が住んでいた。


仮にPさんとしておこう。


大学生活に慣れてきて
ぼくの生活時間帯が
ほぼ昼夜逆転状態になるにつれて(要は授業に出なくなるにつれて)
おたがいの交流は途絶えた。


それでも
徹夜帰りの朝に
Pさんが台所で歯を磨いていたりすると
あいさつがてら世間話もしていたから
嫌われてはいなかったなと思う。


それに
PさんにはPさんで
ちょっと困った習慣があった。


その明け方の
ぼくが一番眠りたい時間帯に
壁の向こうから
「ふん! ふん!」というふんばり声とともに
どすんどすんと足音が聞こえてくる。


かすかにもれてくるユーロビート的な音楽から想像すると
どうやら朝の体操?
それもエアロビ的なものを日課にし始めたようなのだ。


しかし
ぼくにも「何やってるんだ!」と
Pさんに怒鳴りこめない事情もあった。


ふたりの部屋の間に置いてあったはずの廊下の黒電話、
いつしかコードを伸ばして
ぼくが自室に引き込んで
ほぼ私用電話にしてしまっていたのを
Pさんが黙認してくれていたからだった。


ところで
時は流れて2011年の今朝、
夢にそのPさんが出て来た。


どういうわけか
夢のなかで
ぼくは東池袋を歩いていた。


ありゃなんだ?


懐かしいアパートを見上げると
なんと窓一面に
ジミヘンやらグレートフル・デッドやらのポスターが
所狭しと貼られているではないか。


どういうことだと思い
階段を上がると
部屋にはPさんがいた。


記憶のなかよりもすこし老けたPさんは
夢のなかでは今もこのアパートに住み続けていた。


「いやあ
 松永さんに影響されて
 ぼくもロックしようと思ってね」


でもPさん、
確か風のウワサでは
大学卒業後はM商事に手堅く入社されたんですよね?


「やめたよ、あんなところは。
 これからは好きに生きる」


そう言って
Pさんは古いラジカセの再生ボタンを押した。


ジミヘンが大音量で流れ出した。
おもむろに立ち上がると
Pさんは
「ふん! ふん!」とうなりながら
どすんどすんとエアロビ的な体操を始めたのだった……。


というところで目が覚めた。
さてこれは
なんかの予知夢でしょうか?